不動産を売るとき、いちばん怖いのは「結局いくら手元に残るのか分からないまま話が進む」ことです。
仲介手数料や印紙税などの”売却時の諸費用”はその場で出ていき、譲渡所得税などの”税金”は翌年にやってきます。タイミングがズレるぶん、資金繰りでつまずく人が少なくありません。
この記事では、あなたが不動産売却にかかる費用相場(目安)をつかみ、計算方法を自分でシミュレーションできるように、費用の一覧と考え方を整理します。
目次
不動産売却の費用全体像と相場感
費用は「売却時に払うもの」と「後から払う税金」に分かれる
あなたが売却で負担する支出は、ざっくり言うと次の構造です。
- 売却時に支払う諸費用:仲介手数料、印紙税、登記関連、ローン完済関連、測量・解体など
- 売却益に対して後から発生する税金:譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)
ポイントは、諸費用は決済(引渡し)前後に集中し、税金は原則として翌年の確定申告〜納税で発生すること。売却代金が入ったから安心、ではなく「税金分の現金を残しておく」視点が重要です。
目安は売却価格の何%?
費用総額の目安は、一般に売却価格の4〜6%程度とされます(物件条件・ローン有無・利益の出方でブレます)。
- 諸費用の目安:概ね 3〜5%前後(仲介手数料が最も大きい)
- 税金(譲渡所得税):
- 利益が出なければ原則0円(ただし特例や申告が必要なケースは別)
- 利益が出る場合は、所有期間や特例適用で大きく変動
つまり、相場感としては「まず諸費用を把握 → 次に税金は利益の有無と特例で判定」という順で考えると、見通しが立ちやすくなります。
売却時にかかる主な費用(諸費用)の内訳と計算方法
ここでは、売却時に発生しやすい諸費用を一覧として整理し、計算方法(または相場)を具体化します。あなたが「どこでいくらかかるのか」を説明できる状態がゴールです。
仲介手数料:上限計算(売買価格×3%+6万円+消費税)と注意点
不動産会社に仲介を依頼した場合、成功報酬として仲介手数料がかかります。売買価格が400万円超のとき、上限額の計算は次の式が広く使われます。
- 仲介手数料(上限・税別)=売買価格×3%+6万円
- 税込(10%)=(売買価格×3%+6万円)×1.1
例:3,000万円で売却する場合
- 税別:3,000万円×3%+6万円=96万円
- 税込:96万円×1.1=105.6万円
注意点は3つあります。
- これは上限です(必ずこの金額になるとは限らない)。
- 「仲介手数料無料・半額」等の広告は、対応範囲や販売戦略が異なることもあるため、売却価格や期間、値下げリスクまで含めて判断が必要です。
- 専任媒介など契約形態によって、販売活動の濃さや報告頻度が変わります。手数料だけで決めると、結果的に値下げで損をするケースもあります。
印紙税:売買契約書の金額別目安と節税の基本
売買契約書には印紙税がかかります。金額は契約金額(売買価格)で変わり、軽減措置が適用される期間もあります。
実務上の考え方としては、あなたはまず「契約書に貼る印紙はいくら?」を確認し、契約締結前に不動産会社へ金額を明示してもらうのが安全です。
目安(軽減措置がある場合の代表レンジ):
- 数千円〜数万円程度になることが多い
節税というより「ミスをしない」ことが重要です。印紙の貼り忘れ・金額誤りは、余計な手間や追徴リスクにつながります。
登記関連:抵当権抹消の登録免許税・司法書士報酬の相場
住宅ローンが残っていて抵当権が付いているなら、売却時に抵当権抹消登記が必要です。
- 登録免許税:不動産1個につき1,000円(土地と建物が別なら通常2,000円)
- 司法書士報酬:依頼するなら数万円が相場帯(地域・難易度で差)
「登録免許税は安いのに、司法書士報酬が意外とする」と感じやすいポイントです。決済当日に慌てないよう、見積もりを事前にもらってください。
住宅ローン関連:一括返済手数料・完済証明等の費用
ローンを完済して売る場合、金融機関に対して次の費用が発生することがあります。
- 繰上返済(一括返済)手数料:無料〜数万円(ネット銀行・メガバンク等で条件が違う)
- 完済証明書等の発行手数料:金融機関によって有料の場合あり
「ローン残債は売却代金で払えるからOK」と思っていても、手数料は別で必要なことがあります。あなたが確認すべきは、金融機関の手数料体系(窓口/ネット、固定/変動など)です。
状況次第で追加になる費用:測量・解体・クリーニング・不用品処分・引越し
ここは物件ごとの差が出ます。発生しやすい追加費用は以下です。
- 測量費:境界が曖昧、隣地との合意が必要、土地売却などで発生しやすい
- 解体費:古家付き土地として売らず、更地渡しにする場合
- ハウスクリーニング:内見対策として実施するケースが多い
- 不用品処分費:残置物撤去(量で大きく変動)
- 引越し費用:時期(繁忙期)で差が出る
重要なのは、「やるかどうか」で売却価格やスピードが変わる点です。例えば、解体は数十万〜数百万円になり得ますが、更地のほうが買い手が付きやすいエリアもあります。費用だけを見ず、売却戦略とセットで判断してください。
売却益にかかる税金(譲渡所得税)の計算方法
税金は「売れた金額」ではなく、利益(譲渡所得)にかかります。ここを取り違えると、手取りの読みが大きく狂います。
譲渡所得の基本式(売却価格-取得費-譲渡費用)と取得費の考え方
譲渡所得の基本式は次のとおりです。
- 譲渡所得=売却価格-取得費-譲渡費用
用語の整理:
- 取得費:購入代金だけでなく、購入時の仲介手数料、登記費用、印紙税、(一定要件の)リフォームなどを含められる場合があります。
- 譲渡費用:売却のために直接かかった費用(仲介手数料、測量費、解体費など)
特に注意したいのが建物の取得費です。建物は時間とともに価値が減る前提のため、税務上は減価償却費相当額を差し引いた取得費として計算します。
つまりあなたがやるべきことは、
- 購入時の書類(売買契約書・領収書)を集める
- 取得費・譲渡費用に入るものを漏れなく整理する
, これだけで課税対象の利益を圧縮できる可能性があります。
税率の違い:短期・長期(所有期間)と復興特別所得税・住民税
譲渡所得税は、所有期間で税率が変わります。ざっくり言うと、5年が境目です(判定は「売った年の1月1日時点」での所有期間)。
- 短期譲渡所得(5年以下):税率が高い
- 長期譲渡所得(5年超):税率が低い
加えて、所得税に上乗せされる復興特別所得税、そして住民税も関係します。
例えば、短期の場合、所得税30%に復興特別所得税(所得税の2.1%相当)が加算され、合計が30.63%と説明されることがあります(住民税は別枠で加算)。
あなたが確認すべきは、
- 所有期間が短期か長期か
- 住民税も含めた実効税率でいくらになりそうか
この2点です。
使える特例:3,000万円特別控除・軽減税率・損益通算の要点
税金の話はややこしいですが、実務では「使える特例があるか」を先に確認すると整理が早いです。
代表的なのは以下です。
- 3,000万円特別控除:マイホーム(居住用財産)を売ったとき、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円控除
- 軽減税率の特例:長期所有の居住用財産など、条件に合うと税率が下がることがある
- 損益通算・繰越控除:売却損が出た場合に、一定要件のもとで他の所得と相殺できる制度
ここでの落とし穴は、「利益が出ないから関係ない」と思って申告をスルーすることです。損益通算や繰越控除は申告してはじめて使える仕組みが多いので、あなたのケースが対象かは早めに確認してください(税理士や税務署での確認も現実的です)。
手取り額を逆算する計算手順(シミュレーション付き)
不動産売却の目的は「売ること」ではなく、あなたの手元にいくら残るかです。ここでは逆算の手順を、できるだけ迷わない形に落とします。
手取りの基本式(売却代金-諸費用-ローン残債-税金)
手取り計算の基本式はこれです。
- 手取り額=売却代金-諸費用-住宅ローン残債-税金(譲渡所得税)
順番のコツ:
- 売却代金(想定成約価格)を置く
- 諸費用を引く(仲介手数料、印紙税、登記、ローン手数料、追加費用)
- ローン残債を引く(残高証明等で確認)
- 残った利益の構造から税金を見積もる(特例の適用をチェック)
この順にすると、税金の前提になる「譲渡所得(利益)」の見通しも立ちやすくなります。
モデルケースで試算:3,000万円・4,000万円売却時の費用イメージ
ここでは、費用相場の目安をつかむための簡易シミュレーションをします(実際は物件条件・契約内容で変動します)。
ケースA:3,000万円で売却(ローン残債あり・税金は一旦除外)
- 売却価格:3,000万円
- 仲介手数料(上限目安・税込):(3,000万円×3%+6万円)×1.1=105.6万円
- 印紙税:数千円〜数万円(契約金額で変動)
- 抵当権抹消:登録免許税2,000円+司法書士報酬数万円
- ローン一括返済手数料:0〜数万円
→ 諸費用合計の目安感:
- 追加費用が少ない想定なら、ざっくり 120万〜160万円程度から検討スタート(状況で上下)
ケースB:4,000万円で売却(測量・クリーニングが追加、税金は別途)
- 売却価格:4,000万円
- 仲介手数料(上限目安・税込):(4,000万円×3%+6万円)×1.1=(126万円)×1.1=138.6万円
- 測量:必要なら数十万円〜(条件で大きく変動)
- クリーニング:数万円〜
- その他(印紙・登記・ローン関連):数万円〜
→ 諸費用合計の目安感:
- 追加費用込みで 170万〜250万円程度は見ておくと資金繰りが崩れにくい
そして、ここに税金が加わります。
- 売却益が出るか(取得費をどこまで積めるか)
- 3,000万円特別控除が使えるか
- 所有期間が短期か長期か
この3点で、税金は「ほぼゼロ」から「数百万円」まで振れます。あなたの正確な手取りを出すなら、取得費と譲渡費用の証憑(領収書等)を揃えることが最短ルートです。
確定申告と資金繰りの注意点
不動産売却は、売れた瞬間に終わりません。税金と申告が”時間差”でやってくるため、資金繰りまで含めて設計しておく必要があります。
申告が必要なケース・不要なケースと提出時期
基本として、譲渡所得が発生した場合は翌年に確定申告が必要です。
- 申告が必要になりやすい:売却益が出た/特例を適用したい(控除・軽減税率・損益通算など)
- 申告が不要になることがある:そもそも課税関係が発生しない、かつ申告要件に該当しない場合
ただし、特例は「自動適用」ではなく、申告が前提のものが多いです。あなたが節税を狙うなら、「利益が出たかどうか」だけではなく、特例を使うために申告が要るかまで確認してください。
提出時期は通常、売却した年の翌年の所定期間(一般に2〜3月)です。必要書類(売買契約書、仲介手数料の領収書、登記事項証明、取得費資料など)は早めに整理しておくと、申告直前に詰みません。
税金は「翌年に払う」前提で現金を確保するポイント
資金繰りで大事なのは、「売却代金が入った時点で、使っていいお金と取っておくお金を分ける」ことです。
売却直後にやること:
- 諸費用の支払い予定を確定
- ローン完済で残る現金を把握
- 税金の概算(所有期間・特例の可否・利益見込み)を置く
やってはいけないこと:
- 税額の見込みが立つ前に、売却代金を生活費・投資・新居資金へフル投入する
税金は遅れて来るぶん、心理的に”存在しないお金”になりがちです。あなたが安全側に倒すなら、売却直後に「税金用の口座」を分けておくのが現実的です。
不動産売却費用を抑える実務的なコツ
費用はゼロにできませんが、「払い過ぎ」を減らすことはできます。ここでは、金額インパクトが出やすい順に、あなたが実務でやるべきことをまとめます。
譲渡所得の圧縮:取得費・譲渡費用の漏れを防ぐ(領収書・契約書の整理)
税金を左右するのは譲渡所得(利益)で、利益は取得費と譲渡費用で圧縮できます。つまり、節税の第一歩は交渉術ではなく、証拠集めです。
あなたが探すべき代表例:
- 購入時:売買契約書、仲介手数料領収書、登記費用、印紙税、ローン手数料(扱いは要確認)
- 売却時:仲介手数料領収書、測量費、解体費、残置物撤去費など(譲渡費用に該当し得る)
「出てきたらラッキー」ではなく、売却を決めた時点でファイルを作って集めてください。ここが一番効きます。
見積もりで差が出る項目:測量・解体・クリーニングは相見積もりで最適化
測量・解体・クリーニング・不用品処分は、業者と条件で金額がブレやすい領域です。
- 相見積もりは2〜3社で十分(取り過ぎると時間のほうがコストになります)
- 「一式」見積もりは分解してもらう(処分量、重機回送、養生、境界立会い等)
目的を明確にする:
- 早く売るためのクリーニングなのか
- 高く売るための解体なのか
あなたが比較すべきは、単価の安さよりも「売却戦略に合っているか」です。必要ない工事は、安くても無駄です。
仲介手数料だけで判断しない:売却期間・値下げリスクも含めて比較
仲介手数料は確かに大きいですが、売却における最大の変数は「成約価格」と「時間」です。
例えば、手数料が少し安くても、
- 販売活動が弱くて長期化し
- 値下げを繰り返し
- 最終的に100万円単位で成約価格が下がる
…となれば、あなたの手取りは簡単に逆転します。
比較の軸としては、次の質問を不動産会社に投げると見えやすくなります。
- 直近の成約事例(あなたの物件と似た条件)
- 値付け根拠(査定額の”幅”の理由)
- 反響が弱い場合のテコ入れ案(広告、写真、内見導線、価格調整の基準)
手数料の数字は分かりやすい。でも、あなたが守りたいのは最終手取りです。そこから逆算して比較してください。
まとめ
不動産売却にかかる費用相場の目安は、まず売却価格の4〜6%を起点に考えると全体像をつかみやすいです。
ただし内訳を見ると、売却時に出ていく諸費用(仲介手数料など)と、翌年に発生し得る税金(譲渡所得税)が混在しているのが難しさでした。
あなたが手取りをブレさせないために、やる順番はシンプルです。
- 諸費用を一覧化し、仲介手数料は上限式で概算する
- 取得費・譲渡費用の領収書を集め、譲渡所得を正しく出す
- 所有期間と特例(3,000万円控除など)で税金を判定する
- 税金は翌年に払う前提で、売却直後から現金を分けておく
この手順でシュミレーションしておけば、「売れたのにお金が足りない」という最悪の事故はかなり防げます。
最初の一歩として、購入時と売却時の書類を今すぐ1つのフォルダにまとめてください。そこから数字は、ちゃんと現実に近づいていきます。





